4.上級国民/下級国民(小学館新書)橘玲

世代間の溝は深い

日本にはかつて身分格差がありました。それが明治以降四民平等となり、戦後にはもはや実感として「身分の違い」が頭をよぎることすらなくなったと思います。

 

そんな中日本では特に平成になって「格差社会」という言葉がよく聞かれるようになりました。非正規の女性と正社員の男性、大卒と高卒、親の年収が多い少ない・・・

そういった要因が、もはや覆せない生活レベルの差になって現れていることを憂いている言葉です。

 

個人的には世界中で蔓延る、食うに困るレベルの壮絶な貧困格差に比べれば、文明の利器を十全に使える日本人として生まれ、最低限衣食住を保証されている点で日本の格差は「まだ余程マシ」かと思われます。本書では、内容とあまり関係ないかもしれませんが、「この2百年における豊かさの爆発は、かつて王侯貴族ですら凌ぐ贅沢を庶民が享受できるようになった」と述べており、非常に頷かされるところです。(自らの周囲と比べ相対的に劣っている状態が幸福かどうかはまた別問題として)

 

さて、本書では皆さんが薄々気づいている実質的な身分格差はあるというお話をしています。しかしそれは、世代間格差です。

 

特に団塊の世代 VS   若者 の図式として現れます。

①日本的雇用慣行から外部的なショックが起こると、解雇が難しいため、入り口=採用を絞ろうとします。それが就職氷河期が何度も訪れる理由です。その結果生まれる非正規と正社員との格差はもはや身分格差と言って差し支えないと本書では述べています。

 

働き方改革が中々進められなかったのは、日本の人口動態的に主力を占める団塊の世代近辺の既得権益(雇用の確保・賃金の維持)を狭めることができなかったからです。ようやく彼らがいなくなった近年に動き始めたのはそういう背景です。

 

団塊の世代が高齢者となったため、年金改革・社会保障改革は官僚にとっても政治家にとっても反発が大きいタブーとなっています。メディアも新聞の主要読者である高齢者に反感を抱かせる記事はクレームをつけられ、顧客を逃すことを恐れて書きづらくなっています(テレビも同様)。今後令和の20年間は団塊の世代を養うために現役世代の負担する税、が社会保障費を足りなくなる度に引き上げられていくことが本書では予想されています。

 

ざっと要約するとこんなところでした。

これを受けてどう行動に写していくかは我々現役世代が考えて行かなければいけないことです。私はなんとか労働者から資産家の側に回らなければこの未来からは逃れられないと考えています。

 

未来を予測することはほぼできませんが、人口動態だけはほぼ確実な未来予知です。

日本は恵まれた国で、海外旅行に行く度日本の良さ(サービス・食べ物・治安の良さ)が身に沁みています。しかし、日本の将来が今と同じ安泰なものかは些か疑問です。江戸時代は260年、明治維新からアメリカに敗れるまでは70年、今の民主主義社会が機能しているのは戦後から70年です。永遠の繁栄も安全も約束されたものは何一つありません。それだけは忘れないようにしようと思っています。

上級国民/下級国民 (小学館新書) [ 橘 玲 ]

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